本研究室は「社会課題解決につながる情報サービス技術の創出」をビジョンに掲げており,それぞれの研究テーマは適用先・実用化を見据えて課題設定を行っています.
3つの研究領域のもとに,代表的な研究テーマを掲げています.各テーマの「関連発表」には,筑波大学着任(2023年4月)以降に研究室から発表した学会発表を,登壇者名とともに掲載しています.学類生・院生を問わず,配属後1年以内に学外での発表を経験するのが当研究室の標準的なペースです.
Society 5.0を目指したIoTインフラ,6G,オールフォトニクス・ネットワークなど,近未来のネットワークサービス基盤となる技術の研究開発が進んでいます.この研究領域では将来の基盤を想定した課題設定を行い,その解決方法を提案していくことで,より良い新たなネットワークインフラ更新を加速していきます.
Research and development is advancing on technologies that will underpin near-future network services, such as IoT infrastructure for Society 5.0, 6G, and All-Photonics Networks. In this area we formulate problems with these future infrastructures in mind and propose solutions, thereby accelerating the transition to better next-generation network infrastructure.
We extract hardware-specific clock-frequency characteristics over the network to identify devices, and apply the same physical property to correct system time without external synchronization.
膨大な数の配備が必要なIoT機器など,ネットワークサービスを構成するオンライン機器は今後増加が見込まれます.このテーマではコンピュータハードウェア固有の特徴情報(クロック周波数の温度特性)をネットワーク経由で抽出し,これを機器の識別子として活用することで,オンライン上の機器の信頼性を担保する基盤技術を研究しています.
また同じ物理特性を逆方向に利用し,外部との時刻同期通信を行わずにシステム時刻のずれを補正する時刻補正技術にも取り組んでいます.屋外の広い温度変動下での運用評価など,実環境を想定した実用性の検証を進めています.
We evaluate network applications with a focus on latency to clarify the practical benefits of ultra-low-latency All-Photonics Network infrastructure.
すべてのネットワーク接続を光で完結する次世代ネットワーク,All-Photonics Network(APN)の研究開発が進んでおり,一部のネットワークインフラで商用サービスの提供が始まっております.しかし,APNで提供される超低遅延性は観測が難しいこともあり,その効用を十分に説明できていない現状があります.本テーマでは「遅延」をキーワードとしてネットワークアプリケーションを評価することで,APNインフラの有用性を研究しています.
これまでに,主要なクラウド型ビデオ会議サービスの遅延実測と会話への影響評価を行い,さらに超低遅延領域での会話品質を評価するための実験基盤を構築しています.
Leveraging the tamper resistance and low power consumption of SIM cards, we develop applications that keep working when the host device or its network connection fails, such as evacuation-behavior logging in disasters.
スマートフォンやIoT機器などのSIM通信モジュールを搭載した情報端末は,いまや世界中に展開されています.SIMカードは高い耐タンパー性と省電力性を備えた小型のコンピュータであり,端末本体とは独立してアプリケーション(SIM Applet)を動作させることができます.
本テーマではこの特性を活かし,災害時の避難行動記録や重要情報の保全など,端末本体の機能停止や通信途絶を前提とした状況でも有効に働く応用システムを研究しております.
少子高齢化,労働力不足が進行する社会において,Cyber-Physical System(CPS)による人間社会のサポート技術が期待されています.私たちはサイバー空間で稼働するAI,DXなどの情報システムと現実空間をつなぐIoTゲートウェイ,ロボット,センサー,アクチュエータなどのハードウェア技術を駆使して,人を取り巻く個々の具体的な困りごとにフォーカスして,その課題解決アプリケーションの創出を進めております.
In a society facing a declining birthrate, an aging population, and labor shortages, Cyber-Physical Systems (CPS) are expected to support human activity. Combining AI and digital-transformation systems operating in cyberspace with the hardware that connects them to the physical world, such as IoT gateways, robots, sensors, and actuators, we focus on the concrete difficulties people face and create applications that address them.
We visualize spatial temperature distributions with multi-point sensing and analyze heat-source behavior in a thermostatic-chamber testbed to understand hotspots and reduce cooling energy.
データセンターやマシンルームでは,機器の放熱によって局所的な温度異常(ホットスポット)が発生し,冷却効率の低下と消費電力の増大を招きます.しかし一般的なマシンルームでは個々の機器周辺の温度を細かく測定できないため,温度異常の原因が機器の異常なのか熱だまりなのかを判別することすら容易ではありません.
本テーマでは,多点温度センサによる空間温度分布の可視化と,恒温槽を用いたマシンルーム模擬環境での熱源挙動の分析を通じて,ホットスポット発生のメカニズム解明と,空調最適化による省電力化を目指しています.
We study how to delegate IT-operations tasks to generative AI agents while keeping their actions controlled, auditable, and safe against misoperation and malicious instructions.
大学のキャンパスネットワークをはじめ,情報システムの運用現場では慢性的な人手不足が進む一方で,扱う機器と設定の複雑さは増し続けています.本テーマでは,生成AIエージェントに運用作業の一部を委ねることで,この負担を軽減する技術を研究します.運用システムは権限と影響範囲が大きいため,エージェントの動作を安全に制御・監査し,誤操作や不正な指示から守る仕組みをあわせて設計することが中心課題です.
学内ネットワーク基盤の運用に携わる立場からの課題認識と,生成AIの挙動評価に関する知見を土台に,新たに着手したテーマです.
本テーマの動機づけとなった,運用側と生成AI側それぞれからの取り組みです.
We integrate LLMs and multimodal AI into real business processes, such as software test design and product quality inspection, and validate them through industry collaboration.
大規模言語モデル(LLM)やマルチモーダルAIを,実際の業務プロセスに組み込んで役立てるための技術を研究しています.ソフトウェア開発におけるテスト設計の自動化や,製造現場における製品品質判定の客観化など,人の経験と主観に依存してきた作業を対象に,産学連携による実証を通じて有効性と実用性を検証しています.
Using digitized school-activity data such as attendance records, we develop systems that detect early warning signs in students and support teachers in understaffed schools.
労働力不足は教育機関においても深刻な一方で,その期待される役割として学習・進路指導にとどまらず,メンタル面のサポートまで広がってきています.学生/生徒の学校での活動状況,例えば日々の登下校,授業出欠席,イベント参加有無,バイタルなどの総合的な情報はメンタル異常の判断などの貴重な情報源として期待できますが,多くの教育機関においてこれをリアルタイムに把握・分析して指導に活用することは,人手も足りないため容易ではありません.
このテーマは教育現場で,従来教職員が担ってきた指導の稼働を情報システムによって代替することで,人手不足と質の高い指導の両立を目指しています.これまでの取り組みでは学生/生徒の登校状況をリアルタイムに登録・確認できるクラウドサービスベースのDXアプリケーション「OKPASS」を開発し,一部の国立高専で運用を開始しています.
※OKPASSの商用サービスは株式会社MOOBONより学校向け出席管理システム「アテンド+」が提供されております.
当研究室では,OKPASSシステムなどによってデジタル化された学生/生徒の活動データを用いて,教職員に成り代わって異常兆候を自動的に分析・報告するアドバイザーシステムの研究・開発を進めています.
デジタルツイン,メタバースが活用される時代を見据え,これを支援する情報システムやアプリケーションを研究しています.
Anticipating an era in which digital twins and the metaverse are widely used, we study information systems and applications that support them.
We automatically generate large-scale 3D background objects by optimizing fractal-model parameters with evolutionary computation, extending to text-driven, interactive, and distributed generation.
近年,デジタルツインやメタバース技術が注目されており,併せて3Dコンテンツの需要も大きくなっておりますが,そのコンテンツ作成は負担が大きい現状があります.このテーマは3D空間を構成するコンポーネントにおいて,規模が大きい背景オブジェクトに注目し,これを自動的に生成する支援ツールを研究開発しております.
フラクタル幾何学に基づく3Dモデル生成と,進化計算による生成パラメータの最適化を核として,近年はテキスト指示による生成,利用者の主観を反映する対話型進化計算,芸術表現への応用,大規模生成のための分散処理へと展開しています.