最近の研究プロジェクト   by 鈴木 勉
Last Update: April 14, 2006
 
 
●大都市圏空間構造の把握と公共交通利用を促進する環境負荷低減型都市空間構造の解明
 地球環境時代の都市再生が求められている現在,拠点駅を中心とした重点都市開発によって鉄道等の環境 に優しい公共交通を最大限に活用する公共交通志向型都市構造が,コンパクトで持続可能な都市の目標像で あると考えられます.都市工学の手法を用いて,拠点や基幹都市軸の適正配置や公共交通網の設計,公共交 通網による交通流動や利便性への影響分析,公共交通利用率を向上できる都市空間構造の解明を行い,スプ ロール市街地開発や自動車依存から脱却した環境負荷低減型都市の実現に向けた方策立案を目指しています.
 また,現実の大都市圏の人口や就業者の分布と,都市内の地域間時間距離構造との関係を把握することに より,大都市圏の空間構造を把握し,さらに環境負荷軽減に資する公共交通指向型都市空間構造の具体的な 姿の解明にも取り組んでいます.特に最近では,日本と韓国の都市圏データを分析し,通勤交通に焦点を当 てながら,両国の都市構造の差異とそれを生み出す要因について解明を進めています.

●最適交通輸送網の密度・パターンの理論と都市形態・交通ネットワークの発展成長モデルの構築
 交通輸送ネットワーク基盤の適正な配分を明らかにするために,望ましいネットワークの密度やパターン を決定するための理論の構築を行うとともに,航空・鉄道・道路など輸送形態の特徴を考慮した最適輸送網 を追求しています.
 また,フロー需要を基礎とした様々な立地モデルを新たに提案し,都市空間構造の記述を試みるとともに, 立地モデルを用いて都市空間構造の形成において高速輸送網の果たしている役割を明らかにすることによっ て,交通輸送網が都市空間における骨格形成の要因となる仕組みを解明しています.
 さらに,都市の成長により形成される空間形態がどのようなものになるかについて,数理生態学の手法を 応用した都市成長の数理的モデルの構築・解析にも取り組んでいます.鉄道ターミナルや商業中心地などの 拠点配置および鉄道・道路などの交通ネットワーク形態の両者に着目しながら,都市の成長過程を規範的に 記述し,その動学的成長プロセスを明らかにすることを目指しています.

地理情報科学の教授法の確立
 日本における地理情報科学の体系的な教授法を構築するとともに,科学としての理論的枠組みを提示すること を目的とした研究プロジェクトに参加し,講義に加え,演習,実習,野外調査などを有機的に結びつけた,広い 視野にたったGIS教育のあり方の検討をすすめています.特に,都市計画基礎教育における空間データ取得方法の 教育におけるGISの適用可能性について検討を進めています.

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これまでの主な研究プロジェクト

1.都市施設の最適配置
 都市生活を支える種々の施設を適正に配置することは,都市計画の基本的問題の一つです.オペレーションズ・リサーチの分野で蓄積されてきた,p-メディアン問題などのネットワーク空間を前提にしたモデルや,施設の圏域をVoronoi分割を用いて記述できる連続空間を前提にしたモデルなどを基礎として,様々な条件化での都市施設の最適配置を分析しています.

(A) 複合施設の最適配置
 大都市・地方都市を問わず,空間を有効利用した複合施設が各地に出現しています.複合施設にすることにより安くなる固定費用と,複合化によって犠牲にする移動距離とのトレードオフを考慮した最適配置を考察しています.

(B) 施設利用者の周遊行動と最適施設配置・施設圏域
 小売施設をはじめ,いろんな施設を一度に周遊して訪問することは日常的に見られます.このような行動様式を前提とした場合の最適施設配置や施設の圏域がどうなるかを考えています.

(C) フローに基づいた需要を持つ施設の最適配置
 巨大なショッピングセンターが人口の少ない湾岸地域に出現しているように,商業施設をはじめフローに基づいた需要を考慮した立地戦略を考えるべき施設があります.このような施設の配置はどうあるべきかを考えています.

(D) 機能的連携施設群の最適配置
 例えば,救急サービスを考えると,救急車の待機場所と搬送先の病院の両方の配置がそのサービス水準に影響します.こうした機能的に連携している施設群の配置はどうあるべきか検討しています.


2.輸送ネットワークの整備効果と輸送システムの最適化
 都市・国土計画の基本的問題である,都市空間や国土空間にどのような交通網を整備すべきかという問題について,フィジカルな面に着目して理論的に探求しています.

(A) ネットワーク整備量・パターンと移動距離・時間の関係把握
 鉄道や道路などの交通・輸送ネットワークの整備がもたらす時間短縮効果は,その形状と量(延長)と密接な関係を持っています.対象空間の形状も考慮しながら,両者の関係について分析しています.

(B) ネットワークの適正な配置・分布
 仮に起終点が一様に分布していても,交通量は中心部に向かうほど多くなります.全体の領域における地理的位置を考慮したネットワークの適正な配置や分布を検討しています.

(C) 輸送の階層構造とターミナル施設の適正数・配置
 旅客・貨物を問わず,現実の輸送に見られる階層構造が形成されるメカニズムを,集約輸送の経済性の観点から分析しています.


3.都市空間構造と交通量の関係の理論的・実証的分析
 大都市では業務機能の分散政策が進められていますが,Clark, Sherratt, Wilkins, Blumenfeldらのモデルを基礎にマクロな理論モデルを構築したり,センサスや交通調査など現実の都市における実証データを分析したりすることによって,こうした都市空間構造の変化が通勤交通や業務交通などに与える影響を明らかにし,長距離通勤問題や地球環境問題の解決に向けた都市空間構造の改編のあり方を探っています.

(A) 通勤距離・通勤時間の短縮効果
 都市空間構造の変化が通勤距離や時間にもたらす影響を理論的に記述し,目指すべき都市空間構造の状態を探っています.

(B) 環境負荷低減効果
 増大の一途をたどっている運輸部門のエネルギー消費やCO2排出量を削減するための都市空間構造のあり方を検討しています.


4.都市空間の3次元化とコンパクトな都市形状
 20世紀後半に出現した高層建築は,都市空間の3次元化をもたらしました.このことが移動距離や時間に与える影響を考察し,環境の世紀に目指すべき都市形態がどのようなものかを考察しています.

(A) 都市空間の次元と移動距離・時間の関係把握
 平面都市から立体都市に転換することにより,距離や移動時間の分布がどのように変化するかを理論的に把握することを試みています.

(B) コンパクトな都市形態
 交通量削減を可能にすると言われているコンパクトな都市の形状はどのような形状になるかを明らかにしようとしています.

(C) 都市構造・都市機能配置の適正化
 輸送ネットワークの存在が適正な形状にどのような影響を与えるか,都市内部の機能配置はどうあるべきかを追求しています.


5.都市におけるリスクの分析と評価
 都市問題にはリスクの概念を適用すべき未着手の問題が数多くあると考えています.こうしたテーマを開拓する研究にも取り組んでいます.

(A) 計画に伴うリスクの理論研究
 将来予測の不確実性が生み出す都市計画の失敗は,供給側としての公共にとっても需要側としての住民にとっても何らかの損失をもたらします.リスクの少ない計画とは何か,具体的な事例を通してその本質をモデル化することを試みています.

(B) 交通・供給処理ネットワークにおけるリスクの評価と改善
 災害時や事故時における交通・供給処理施設への影響を分析し,信頼性の高いネットワークとは何かを明らかににしようとしています.

(C) リスク管理型公共サービスの評価と改善
 消防・救急・防犯などリスク管理型公共サービスとそれを支えるインフラストラクチャーのあり方を追求しています.

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