多主体系シミュレーションによるエネルギー政策の実証的評価

 エネルギーシステムは,単一の社会計画者ではなく,複数の事業者によって構築・運用される多主体系です.特に,自由化された市場では,化石燃料と低炭素エネルギーとの間の技術選択は,燃料価格・技術進展・気候変動などの不確実性を事業者がどのように解釈するかに影響されます.

 本研究の目的は,こうした状況下におけるにおけるエネルギー事業者の認知と行動に着目し,どのような制度を設ければ低炭素エネルギーへの投資が進むのかを実証的に明らかにすることです.具体的には,市場を模擬したマルチプレイヤーゲームを開発し,このゲームを人間がプレイするゲーミング実験と,人工知能がプレイするエージェントベースシミュレーションを行います.両者の結果を統合的に分析することで,事業者の行動を左右する心理的要因や,行動変容に有効なルールについての示唆を導くことを目指します



絵の説明文


 エネルギー政策共創のためのゲーミングワークショップの開発と実践

 持続可能なエネルギーシステムを築くためには,専門家と市民とが,安定供給・コスト抑制・気候変動対策・衡平性の確保などが複雑に関係する,政策課題の全体像を共有することが求められます.その際,専門家が一方的に知識を提供するのではなく,システムの利害関係者である市民が何らかの形で意思決定プロセスに関わり,政策を共に創りあげてゆくことが大切です.

 そこで本研究は,電力システムを表現するゲームを市民がプレイし,専門家がその結果を分析して行政にフィードバックする,新形式のワークショップを提案します.これにより,行政と市民の相互理解,市民からの意見やアイデアの収集,起こりうる未来の発見的な探索を同時に行い,エネルギー政策の立案に有用な知見を得ることを目指します.



北海道電力システムモデルの概念図


 需要減少下におけるエネルギーシステム低炭素化のための長期シナリオ分析

日本の人口は減少に転じており,エネルギー需要も今後減少して行くことが予想されます.需要が減れば利益も上げづらくなり,いまある設備の更新も難しくなります.一方で,気候変動対策の観点からは,低炭素なエネルギー設備への投資を進める必要があります.すなわち日本のエネルギーシステムは,需要が減少する中で積極的な設備投資を進めなければならないという困難な状況に置かれています.

本研究は,日本の中でも人口減少が特に著しいと予想される北海道を対象とし,長期的な電力システムの維持と低炭素化をどのように進めればよいかを,動学的最適化モデルを用いたシナリオ分析を通じて明らかにします.北海道についての研究成果は,いずれ訪れる全国的なエネルギー需要の減少に対処する上でも役立つものと期待できます.



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 自治体のエネルギー政策支援のための統合的統計データベースの構築

エネルギー源の分散化に伴い,国や県レベルだけでなく,市町村レベルでのエネルギー政策の重要性が高まっています.しかし,政策立案の基礎資料となるエネルギー需給や経済状況に関わる統計データは,国レベルではある程度充実しているものの,市町村レベルのデータはあまり公開されていません.このことは,複数の自治体の比較分析を行い,国レベルと自治体レベルの政策の連結を考える上で特に重要です.

本研究は,公的機関が公開する統計の中から市町村レベルのエネルギー政策分析に有用なデータセットを見つけ出し,これまで知られていなかった新たなデータ活用法の提案を目指すものです.第一弾として,市町村統計書と納税額のデータを組み合わせた要因分解分析を行い,北海道内の市町村における震災後の電力需要減少の要因分析を行いました.



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