学振DCを取る方法(僕の場合)


この度、学振の特別研究員に平成23年度から採用されました。ここでは採用までに参考になったこと、感じたことなどを述べていきます。僕は書類審査、面接を経て採用となったケースです。固いコトはあまり言えないので、なるべくシンプルに説明したいです。基本的には自分用のメモ。でも今後の参考になれば。

学振特別研究員とは

学振特別研究員(日本学術振興会 特別研究員)とは、ホームページの文章を引用すると

我が国トップクラスの優れた若手研究者に対して、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与え、研究者の養成・確保を図る制度です。

とのこと。国から研究補助金?なるものをもらいながら、研究できるという博士課程の学生からしたらうまい話。ある分野ではこれに採用されると、いわゆるアカポスにも受かりやすくなるとかならないとか。とにかく受けてみる価値はありそう。僕はこの制度を博士課程の先輩から教えてもらいました。

申請書を書いた際に参考にさせてもらったページを列挙しておきます。これらがあればこのページはいらないかも知れない。また、大学などで開催されるセミナーなどにも参加して参考にすると良いです。僕は参加しようと思ったらとっくに終了してたのですが。このページの意義は2011年現在で最新版というコト。

  1. road to jsps - 学振とるまで|nao@xrea
  2. 学振申請書の書き方|YOSHIMURA Laboratory
  3. 学振書類「自己評価」ハック。|酒とアザラシと怠惰な日々。
  4. 自己評価導入へ~学術振興会特別研究員~|とっさ日記
  5. 学振まとめ①〜⑤|ドクターへの道

学振に申し込む

どうすれば学振に応募できるの?

申請書を書きます。GW後あたりに大学が締め切りを設定しているので、それまでに申請書を書き上げます。僕はGWまるまる申請書でつぶれました。というかそれまで書いていない方が珍しい?とにかくこの紙でほとんど決まるので、本気だして書きます。

申請書を書くときに気をつけたこと4つ

学振の申請書に力を入れて書かなきゃならない項目は

  1. 現在までの研究状況
  2. これからの研究計画
  3. (1) 研究の背景
    (2) 研究目的・内容
    (3) 研究の特色・独創的な点
    (4) 年次計画
  4. 研究業績
  5. 自己評価
です。結構、重い。書くときにまず気をつける事は日本語の意味を間違えないコトです。例えば、「2. 現在までの研究状況」の部分にも

① これまでの研究の背景、問題点、解決方策、研究目的、研究方法、特色と独創的な点について当該分野の重要文献を挙げて記述してください。

② 申請者のこれまでの研究経過及び得られた結果について、問題点を含め①で記載したことと関連づけて説明してください。なお、これまでの研究結果を論文あるいは学会等で発表している場合には、申請者が担当した部分を明らかにして、それらの内容を記述してください。

という補足文がついていて、この文の意味を誤解すると見当違いな文章になってしまいます。変な文章は読んでもらえないので、注意。

「これまで」と「これから」に分ける

文章をいきなり書ける人はうらやましい。僕は書けません。僕の場合、頭の中にある研究についての考えをノートにずらっと書き並べるところから始めます。学振の書類では、それが「これまで」の話か、「これから」の話かを区別していく。この区別をするといいたい事がスッキリします。「これまで」は「2. 現在までの研究状況」に「これから」は「3. これからの研究計画」に分類していきます。「これまで」はすでにあるものをまとめるのでわりと簡単。問題は「これから」で、自分の言葉でシンプルにやりたい事を説明することがとても難しい。でも上の項目からも分かるように申請書で求められているのは、あきらかに「これから」の部分ですよね。

書きまくって、削っていく

ノートにリストアップするときや、文章を書くときは何度も同じ事を書く。無駄だと思うかもしれないけど、これは結構大事。内容は同じでも表現が違う言い方を繰り返し、言葉を磨いていく。ちょっとした言い回しひとつで文章全体をダメにするし、逆に輝かせることができる。急がば回れです。この過程ではノートが必須、個人的にはPC上よりも手書きノートの方がやりやすいです。シンプルな言葉で、直感的にわかりやすく研究内容を表現することを心がけます。具体例を示すのもOK。こうして何も知らない人に研究内容を説明する文章を作ります。テレビの言葉使いとかが意外と参考になる事が多いです。

何の役に立つの?

これが一番大事。普通の人は自分のやっている研究に興味を持ってくれません。研究の話を友人に話し始めると「へぇー」しか返事がなくなる事からも明らかです。ですが、学振の申請書は自分の研究内容を知らない人(少なくとも熟知しているわけではない人)に自分の研究を紹介する必要があります。そんな人たちに自分の研究を認めてもらうためには、ユーザーのメリットを説明することが重要。この研究で世の中がこんなに良くなります!と売り込むわけ。研究分野によってはこの部分がはっきりしている場合もありますが、僕はとても苦労しました。「なぜこの研究が注目されるべきなのか?」という問いにTwitterのつぶやき程度の長さで簡潔に答えます。

リストアップ一覧

実際に僕がリストアップしたテーマを並べます。これらについて思った事を書き並べていきました。参考になれば。

 これまで 

 これから 

自己評価

自己評価は就活のエントリーシートに似ています。僕はこれまで本気で就活した事が無かったため全くはかどらず、就活しておくべきだったと少し後悔。自己分析とかしちゃいます。まずは基本に戻って、申請書の日本語を読み返します。

日本学術振興会特別研究員制度は、我が国の学術研究の将来を担う創造性に富んだ研究者の養成・確保に資することを目的としています。この目的に鑑み、申請者本人による自己評価を次の項目毎に記入してください。

① 研究職を志望する動機、目指す研究者像、自己の長所等

② 自己評価する上で、特に重要と思われる事項(特に優れた学業成績,受賞歴,飛び級入学,留学経験,特色ある学外活動など)

要は、自分が特別研究員にふさわしいと論じろといういうこと。僕が取った基本方針は「自分は日本の学術研究の将来を担う研究者になれるか?」という問いに答えるというコト。なんかいろいろと難しく書かれているけど、シンプルに考えて

自分は (動機・目指す研究者像) な人間で、

こんなに (長所・実績) だから

日本の将来を担う研究者になれる!

という文章をたくさん作ってつなぎ合わせる。難しい文章で惑わされずに、自分の良い点をアピールできれば良いです。

学振面接

GWをつぶして書いた申請書類、それだけで採用となれば良かったのですが、まぁそう上手くいきません。11月の頭くらいに、封筒が送られてきました。風の噂で不採用はハガキと聞いていたので、テンションあがるも面接通知。また準備か…と落ち込みました。でもね、不採用ではないので。採用まであと少し!とモチベーションを維持。

面接の情報はWeb上に意外と少なく、不安がありました。以下では僕が体験してみて分かった事をここでは書いておきます。学振の面接は

・ 場所:弘済会館@JR四谷駅(上智大学のとなり、コウサイと読む)

・ 時間:10分(4分説明+6分質疑応答)

・ 面接官:近い分野の人1〜2名、他分野の人4〜6名

・ 言うべき事:自分は学振にふさわしい人間である!

が基本情報。申請書を書いてからほぼ半年経っているので、半年間での業績、新しいアイディア、そして自分の研究の魅力を端的にアピールする方法を考えました。せっかく知らない人にアピールする場なので、この研究は面白そうだなと思ってもらいたいでしょう。面接官を楽しませるのが目標です。

4分しかない

面接でイチバンの問題は時間。通常の学会発表のノウハウが使えません。4分って… 話の途中で噛んだら致命傷、練習は必要不可欠です。4分間に人生かかってます。僕は申請書のまとめ(いちばん伝えたい事)に1分、申請後に挙げた業績に1分、申請書提出後に思いついた新たなアイディア(2分)という内訳で計画を立てました。考えて、考えて、削りまくり、自分の研究のエッセンシャルを抽出します。こうしてできたストーリーを30回練習(4×30=120分だからそんなに時間がかからない)。

注意することが1つ。たいてい、言いたい事があふれて4分では入りません。気持ちはとても分かる。でも、ちょっと物足りないくらいで止めておく勇気が必要です。そのかわりに自分の伝えたい事をゆっくりしゃべる、先を急がない、そして余裕を持つ。普通に考えたらみんな言いたいことを詰め込んで、早口でマシンガンのようにしゃべることになる。でもそれじゃあ伝えたいことが伝わらない。だからあえて自分の本当に伝えるべきコト、いちばんアピールしたいコトをシンプルにゆっくり言うんです。

質疑応答をなめちゃいけない

準備段階でおろそかになりがちなのが質疑応答。何せ予行練習できないですし、4分間の説明の準備がハンパない。でもね、説明時間よりも質疑応答の方が時間が長いのです。質問の準備ってどうするの?と。僕は質問と答えをカテゴリー分けして準備しておきました。多くて7つくらいに分類しておけば、とっさの質問はだいたいこのカテゴリーに入ります。これは学会発表のときも同じで、結構使えます。例えば今回は

  1. 研究のいちばんの売りは?
  2. 研究の問題点と解決策?
  3. 先行研究と何が違う?
  4. なぜこの研究が重要なのか?
  5. どの分野で役に立つの?
  6. 自分の得意な分野、苦手な分野?
  7. 研究活動のなかで普段、気をつけていること?

というカテゴリーをつくりました。実際に面接で聞かれたコトは、

くらいでした。「誰がやっているの?」は予想外でしたが、「どの点が新しい?」は先行研究との差、いちばんの売りで対応。「達成した時のインパクトは?」研究の重要性、役に立つ分野を具体的に言うことができました。指導教官や研究室の先輩に見せる時間が取れるのであれば、そのときに質問されたコトをメモして参考にするのがいいです。思いがけない質問が来るかもしれないし、その時はラッキーという感じでカテゴリーを1つ増やせます。

まとめ

こうして書類選考、面接を経て、12月28日に採用内定をもらうことができました。いろいろと書いてきましたが、学振の特別研究員に応募して思ったことは、自分の研究をみつめる良い機会です。普段はあいまいになっている部分を言葉で具体化することで、自分に何が足らないか、自分は何に強いのかが分かりやすくなりました。なので、研究者を目指す人は是非とも応募することをおすすめします。

同時に、「研究者になりたい」という志から「日本を代表する研究者になりたい」という気持ちに変わっていったことも、僕を成長させてくれたと考えています。まだまだ未熟なイチ学生ですが、この経験をすこしでも生かして今後につなげたい。そうやって毎日研究しています。